相続の相談でよくある「4つの誤解」

日常の会話の中で相続の話になった時や相続の相談を受けている時、「あー、それはちょっと違うな」と思うことがあります。
その背景には、相続についての思い込みや誤解があります。

「うちは財産が少ないから相続は関係ない」、「子どもたちは仲がいいから揉めることはないと思う」、「まだ相続対策をするには早すぎる」--。
そう思っていたことが、いざ相続が発生したときに大きな問題につながることがあります。

今回は、相続の相談でよくある4つの誤解について考えてみたいと思います。

①「財産が少ないから、相続は関係ない」

これは非常に多い誤解です。

「相続税がかかるほど財産はないから、相続対策は必要ない」と考える方がいます。
しかし、相続税がかかるかどうかと、家族が円満に遺産を引き継げるかどうかは別の問題です。

裁判所の統計を見ても、遺産分割事件で争いになっているものの約77%が遺産総額5,000万円以下です。さらに、1,000万円以下でも約35%、つまりおよそ3分の1を占めています。

実際に揉める家庭の多くは、相続税がかからない家庭です。
特に問題になりやすいのが、「自宅と少しの預貯金」というケースです。預貯金は分けられても、自宅は簡単に分けることができません。
「誰が住み続けるのか」、「売却するのか」、「他の相続人との公平性をどうするのか」といった問題が起こります。

亡くなった方の数だけ、相続はあります。

「財産が少ないから大丈夫」ではなく、財産が限られているからこそ、引き継ぎ方を考えておくことが」大切です。

②「うちの子どもたちは仲がいいから、揉めるはずがない」

親から見れば、仲の良い子どもたちでも、相続が発生したときにはそれぞれの事情があります。事情が変われば、考えも変わってきます。

例えば、経済的に余裕がある子と、住宅ローンや教育費などで苦しい子では、相続財産に対する考え方が違ってくることがあります。
また、親の介護や身の回りの世話を長年してきた子と、ほとんど関わらなかった子との間では、公平性をめぐって考え方も変わってきます。

さらに、不動産の評価額をめぐって意見が対立することもあります。
その上、不動産は売れたり貸せたりするものばかりとは限りません。
古いアパートや利用価値の低い土地など、いわゆる「負動産」があれば、誰が引き継ぐのかを相続人同士で押し付けあうことになるかもしれません。

だからこそ、仲が良い今のうちに話し合うことが大切です。
家族関係が良好なうちに、お互いの気持ちや考えを共有しておくことが、将来のトラブル防止につながります。

③「相続対策は、まだ早い」

「まだ元気だから」、「もう少し年を取ってから」と思っているうちに、時間があっという間に過ぎていきます。

年齢を重ねると、判断能力や認知機能、体力が低下し、相続対策を考えたり手続きをすること自体が億劫になることがあります。
そして、判断能力がなくなってしまえば、原則として遺言書を書くことも、生前贈与することも、不動産を売却することも難しくなります。

相続対策は、早く始めるほど選択肢があります。反対に、「いざという時」になってからは、できることが限られてしまいます。
節税対策についても、一般的には時間をかけて行う方が効果は大きくなります。

体も心も元気な時だから、いろいろな対策が行えます。
「まだ早い」と思える時期こそ、実は相続対策を始める良いタイミングだと言えます。

④「相続対策は親だけ、または家族の一部だけでやればいい」

相続対策では、もちろん財産を持つ親本人の意思が最も重要です。
しかし、相続は親だけの問題ではありません。相続する家族にとっても大きな問題です。

例えば、親が「長女にこの不動産を相続させる」と遺言を書いたとしても、それが長女にとって望ましい財産とは限りません。
古いアパートや管理の難しい田舎の山、誰も住む予定のない実家などを引き継ぐことを、本人が負担に感じる場合があります。

また、親と長男だけで対策を進めた結果、他の子どもたちが内容に納得できなければ、相続後にトラブルになることもあります。
親の財産がきっかけで、子どもたちの人間関係が悪くなってしまっては、親も本意ではないでしょう。

必要に応じて家族会議を開き、それぞれの気持ちや考えを共有することが大切です。

「うちは大丈夫」と思っている今こそ、話し合う時

相続で本当に大切なのは、財産をいくら持っているかだけではありません。
家族がどのような思いを持ち、その思いを共有し、どのように納得していくかです。

「財産が少ないから」「子どもたちは仲がいいから」「まだ早いから」「親が決めればいいから」--。
こうした思い込みが、後になって「こんなはずではなかった」という結果を招くことがあります。

相続対策は、単に遺言書を書いたり、節税をすることではありません。
家族の現状を知り、それぞれの思いや将来を考えながら、円満な相続への道筋をつくることだと思います。

「うちは大丈夫」と思っている今こそ、一度、ご家族で相続について話してみてはいかがでしょうか。


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この記事を書いた人

吉野喜博

吉野喜博

1951年5月、広島県広島市生れ。現住所は埼玉県所沢市。
国立呉工業高等専門学校建築学科を卒業して、建築の企画・設計・監理業務に約30年従事する。
30年前位から不動産の仕事(ビル・マンション企画開発・販売、土地の仕入れ、仲介業務等)も併行して行う。
2008年から相続の勉強に本格的に取り組む。
2016年から所沢市にて、市民の方を対象に相続勉強会と相続相談会を開催している。
2022年4月に所沢相続サポートセンターを設立。
各所で、相続セミナーの講師および相続相談会の相談員を担当。

趣味:
所沢の米で日本酒を作る会の監事、日本酒を嗜むこと、カラオケ、韓国語の勉強、映画鑑賞。

保有資格:
NPO法人 相続アドバイザー協議会認定 上級アドバイザー、
一般社団法人 相続診断協会認定 上級相続診断士、 公認 不動産コンサルティングマスター、
相続対策専門士、 一級建築士、 宅地建物取引士、 ファイナンシャルプランナー