「相続」と聞くと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。
相続税の申告や節税対策を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
しかし、相続を相続税の問題としてだけ捉えていると、大切なことを見落としてしまいます。
相続税がかからない家庭でも、相続でもめることが十分にあるのです。
その大きな原因の一つが「不動産」です。
相続問題は、お金持ちだけの問題ではない
相続財産には、預貯金や株式などの金融資産のほか、土地や建物といった不動産があります。
日本では、相続財産の中で不動産の占める割合が大きく、相続財産の半分以上を不動産が占めることもあります。
預貯金が1億円あれば、相続人が2人なら5,000万円ずつ分けることができます。
しかし、財産の大部分が自宅の土地と建物だったら、どうでしょうか。
自宅を半分に切って分けるわけにはいきません。売却して現金に換えるにも、住んでいる家族の生活があります。
このように、不動産は簡単に分けられない財産です。
つまり、相続財産に不動産が含まれていれば、財産の多い少ないにかかわらず、どの家庭でも相続問題が起こる可能性があります。
不動産が相続トラブルを招く7つの理由

不動産が相続トラブルの原因になりやすいのには、いくつかの理由があります。
①相続財産の大部分を占めることがある
預貯金が少なく、自宅などの不動産が財産の大半を占める家庭では、相続人全員が納得できる分け方を見つけるのが難しくなります。
②物理的に分けにくい
土地が道路に沿って羊羹のように長方形であれば分けられるかも知れませんが、ほとんどの土地はそうではありません。
ましてや、その土地に建物が建っていれば、簡単に分けることはできません。
土地を法定相続分どおりに共有にすると、一見、公平に分けられたように見えます。
しかし、将来売却したり、大きな変更を加えたりする際には、共有者間の調整が必要になります。
さらに、共有者に相続が発生するたびに権利関係が複雑になり、関係者が増えていくこともあります。
そして、いざ売却しようとしても、共有者全員の同意を得ることが難しくなっていきます。
③価格が分かりにくい
土地には「一物四価」という言葉があります。
公示価格、相続税路線価、固定資産税評価額、実際の市場価格(実勢価格)など、目的によって異なる価格が使われます。
どの価格を基準にするかによって評価額が変わるため、相続人の間で意見が対立することがあります。
④相続人それぞれに思いがある
「親の家を残したい」「売却して現金にしたい」「賃貸にして収入を得たい」など、希望は人それぞれです。
単に金額を計算するだけでは解決できない問題があります。
⑤不公平感が生まれやすい
例えば、長男が自宅を相続すると、弟や妹には殆ど財産が残らないケースがあります。長男が弟や妹に代償金を支払えればよいのですが、十分な現金がなく、思うように調整できないことがあります。
⑥すぐに現金化できない
不動産の売却には、境界の確認や正確な測量、建物の解体などが必要になる場合があります。
権利関係や土地の状況によっては、売却までに時間や費用がかかります。
⑦相続したくない不動産もある
駅から遠い地方の住宅、別荘、山林、空き家などは、買い手が見つからず、維持管理費や固定資産税だけが負担になることがあります。
古いアパートも、空室や修繕費によって収支が悪化し、借入金の返済だけが残る可能性があります。
不動産は必ずしも財産になるとは限りません。
相続する前に、その不動産が本当に価値のある資産なのか、慎重に見極める必要があります。
評価額の勘違いがトラブルを招く
実際の相続では、不動産の評価をめぐって問題が起こることがあります。
例えば、遺産分割の話し合いで不動産の価値を比較する場合、相続税路線価をそのまま市場価格として扱うのは適切ではありません。
相続税路線価は税法の世界でなので、相続税の計算に用います。
しかし、遺産分割は民法の世界なので、当事者全員が路線価を使うことに合意していれば別ですが、実際の価値(市場価格)や不動産鑑定を参考にして用いる必要があります。
ところが、不動産の評価に詳しくないまま、遺言書や遺産分割協議書の作成に路線価を使い、その金額を実際の価値であるかのように扱ってしまうと、後になって問題が生じることがあります。
実際に、遺言書に記載された不動産の評価が市場価格とかけ離れていたため、相続発生後にトラブルになったケースもあります。
不動産の価格は、評価の目的や土地の形状、接道状況などによっても変わります。
数字だけを見て判断せず、その数字が何を表しているのかを理解することが大切です。
道路が違うだけで、土地の価値が変わる
もう一つ、土地の分け方で問題になった事例をご紹介します。
ある土地は東西に細長く、東側が市道、南側も道路に面していました。
相続が発生し、遺言書に従って兄弟で、土地を東西に二分割することになりました。
兄は市道と南側道路に面した東側の土地を、弟は南側道路に接した西側の土地を相続しました。
ところが、弟が自分の土地を売却しようとしたところ、思わぬ問題が発覚しました。
南側の道路は通路であり、建築基準法上の道路ではなかったのです。
建物を建てるための接道条件を満たしていない場合、原則として新たな建築ができません。
そのため、弟の土地は売却や活用が難しくなり、兄弟間のトラブルにつながりました。
土地を分ける際には、面積を同じにすれば公平というわけではありません。
道路の種類や接道条件、土地の形状、建築の可否などによって、土地の価値や利用のしやすさは大きく変わります。
円満な相続のために、不動産を知ることから始めよう
相続対策というと、相続税の節税や遺言書の作成を思い浮かべる方が多いかもしれません。
もちろん、それらも大切ですが、不動産をどう分けるのか、誰が引き継ぐのか、将来どのように活用するのかという問題を後回しにしていては、円満な相続は実現しにくくなります。
まずは、ご自宅や所有している土地、アパートなとについて、次のことを確認してみましょう。
・現在の市場価格はどのくらいか
・売却や活用は可能か
・相続人の間で公平に分けられるか
・維持管理費や修繕費の負担はどのくらいか
・将来、誰が引き継ぎ、どのように管理するか
必要に応じて、不動産会社や不動産鑑定士、不動産コンサルタントなどの専門家の力を借りることも重要です。
私は、不動産業の資格として知られている宅地建物取引士の上位資格にあたる「不動産コンサルティングマスター」や「相続対策専門士」の資格も保有しています。
何か困ったことがありましたら、ご相談いただければと思います。
相続は、財産を次の世代に引き継ぐだけの手続きではありません。
家族がこれからも良好な関係を保ち、安心して暮らしていくための準備でもあります。
「うちは財産が少ないから大丈夫」と思わず、まずは不動産の現状を把握すること。
それが、将来の相続トラブルを防ぐ第一歩です。
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