2021年に民法等の法律が一部改正され、この4月からいよいよ施行される法律がいくつか有ります。

その内の一つに遺産分割協議に関するものが有ります。

遺産分割協議は、今まで期限が特に有りませんでした。

そのため遺産分割しないでそのまま放置され、相続した土地の名義変更がされないままその後も何世代にも渡って相続が起き、結局共有者の数が増大して土地が塩漬けになったり、所有者が不明になったりしています。

この事が、土地の売買が出来なかったり、土地の有効活用が出来なかったり、再開発が出来なかったりしているので大きな社会問題となっています。

この問題を解決するために、今回、遺産分割協議に期限が設けられたという話が有りますが、果たしてどうなのでしょうか?

そもそも遺産分割協議とは何?

そもそも「遺産分割協議」とは何でしょうか?

人が亡くなって(被相続人)その人の遺産を分ける場合、遺産分割には優先順位が有ります。

先ず一番に優先されるのは、遺産を残して亡くなった人の意志である「遺言書」です。
遺言書がある場合は、基本的に遺言書の内容に従って遺産は分割されることになります。

遺言書が無い場合、残された相続人全員で話し合い(協議)をして遺産の分け方を決めます。
これが遺産分割協議です。

遺産分割協議は、相続人全員で合意する必要があります。
全員が合意すれば、法定相続分に縛られること無く、どのような分け方も可能です。
また、全員が合意すれば、遺言書を使わないで遺産分割することも可能です。

但し、一人でも反対する相続人がいる場合、遺産分割協議は纏まりません。
纏まらない場合は、家庭裁判所において調停や審判をして分割することになりますね。

遺産分割協議の期限は?

では、この4月から遺産分割協議に期限が設けられたのでしょうか?

結論から言うと、期限は設けられなかったようです。

私も色々調べてみると、今回の改正では、遺産分割自体に期限は設けられず、特別受益と寄与分について、相続開始から10年間を経過すると主張する事ができなくなったようです。

※(特別受益とは、特定の相続人が、被相続人(亡くなった人)から生前贈与などを受けて得た利益のことをいいます。
特別受益のある相続人がいる場合、特別受益の持ち戻しの計算を行なって、当該相続人の遺産取得額を減らすことができます。)

※(寄与分とは、特定の相続人が、相続財産の増加や維持に対して特別の貢献をした場合に認められます。
例えば、被相続人を献身的に介護した場合などに、寄与分が認められることが有ります。
寄与分が認められた当該相続人は多めの遺産を取得することができます。)

従って、遺産分割において遺産取得額で争っていても、相続開始から10年を過ぎると特別受益も寄与分も主張出来ないので、基本的に法定相続分での分割となります。

また、争っているので殆ど無いかも知れませんが、10年経過後も相続人全員が話し合って合意すれば、法定相続分と異なる分割も可能のようです。

経過措置

改正法の適用時期については、経過措置が設けられています。

1.改正法の施行時(2023年4月1日)において、相続開始から10年が経過している場合
 ⇒ 施行時から5年の猶予期間が与えられる。

2.相続開始から10年を経過する時が、施行時から5年を経過する時よりも早い場合
 ⇒ 施行時から5年猶予期間が与えられる。

3.相続開始から10年を経過する時が、施行時から5年を経過する時よりも遅い場合
 ⇒ 施行時か5年の猶予期間は適用されず、相続開始から10年以内に遺産分割しなければ、特別受益・寄与分の主張はできない。

以上のように経過処置は有りますが、法施行前(今年3月迄)に起きた相続についても適用されますので注意が必要ですね。

遺産分割協議を早くした方が良い理由

以上のように、所有者不明土地を解消して土地の利用を促進するために、遺産分割協議は早く行なう事が重要ですが、その他にも遺産分割協議を早くした方が良い理由がいくつか有ります。

1.相続放棄・限定承認の期限:3ヶ月
 3ヶ月過ぎると、相続放棄や限定承認ができなくなります。
もし、自分が相続する財産に借金や保証債務が有った場合、3ヶ月過ぎると自動的に単純承認となりマイナスの財産を相続してしまいます。

2.相続税の申告・納付の期限:10ヶ月
 10ヶ月以内に相続税の申告と納付をしなければいけません。
過ぎると高額の延滞税を支払わなければいけません。
また、10ヶ月以内に遺産分割協議が締結されていないと、相続税の大バーゲンである「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」が適用できません。

3.相続登記の期限:3年
 今まで相続登記(相続した不動産の名義変更)に期限は有りませんでしたが、こちらも民法改正されて「相続登記」が義務化され、来年4月1日から施行されます。
相続した不動産の名義変更は3年以内にしなければならず、正当な理由無く行なわない場合は、罰則(10万円以下の過料)の対象となります。

4.特別受益・寄与分を主張できる期間:10年
 先ほど述べたように、相続開始後10年を過ぎると、特別受益や寄与分の主張はできなくなります。
特別受益や寄与分を主張したいなら、10年以内に遺産分割協議を終わらせなければいけません。


以上述べてきたように、遺産分割協議自体に期限は設けられませんでしたが、遺産分割協議は様々なことに関係してきます。

相続において不利益を被らず、子孫に迷惑をかけず、円満な相続を実現するためには、遺産分割協議は速やかに行ないましょう。

遺産分割や遺産分割協議で悩まれていることが有りましたら、早めに相続の専門家にご相談ください。


参照
・武蔵野経営法律事務所:
 【2023年法改正】民法改正で遺産分割のルールが変る!遺産分割の期限は10年?
・弁護士法人サリュ:
 遺産分割の期限はない。ただし10ヶ月以内にすべき理由を解説 

この記事を書いた人

吉野喜博

吉野喜博

1951年5月、広島県広島市生れ。現住所は埼玉県所沢市。
国立呉工業高等専門学校建築学科を卒業して、建築の企画・設計・監理業務に約30年従事する。
30年前位から不動産の仕事(ビル・マンション企画開発・販売、土地の仕入れ、仲介業務等)も併行して行う。
2008年から相続の勉強に本格的に取り組む。
2016年から所沢市にて、市民の方を対象に相続勉強会と相続相談会を開催している。
各所で、相続セミナーの講師および相続相談会の相談員を担当。

趣味:
所沢の米で日本酒を作る会の監事、日本酒を嗜むこと、カラオケ、韓国語の勉強。

保有資格:
NPO法人 相続アドバイザー協議会認定 上級アドバイザー、
一般社団法人 相続診断協会認定 上級相続診断士、 公認 不動産コンサルティングマスター、
相続対策専門士、 一級建築士、 宅地建物取引士、 ファイナンシャルプランナー