相続対策とは「何かをすること」ではなく、「全体を設計すること」

相続の相談を受けていると、よく次のような質問をいただきます。

・遺言書はどう書けばいいですか?
・相続税を減らす方法はありますか?
・生前贈与はどのようにするのが一番いいですか?
・不動産は売却した方がいいですか?賃貸した方がいいですか?
・生命保険に加入した方がいいですか?

これらはどれも大切なテーマです。
しかし、それらは全て「手段(方法)」であって、目的ではありません。

手段を考えるためには、先ずその目的は何なのかをはっきりさせる必要があります。

では、相続対策の目的とは何でしょうか?

相続対策の目的は、家族の幸せ

相続対策の目的とは?

それは、先ず親御さんが、生前を安心して自分らしく幸せに暮らせることだと思います。

そして、相続が発生した後に円満で円滑な相続を実現し、相続人たちが幸せになることでしょう。

ところが、手段だけに目を向けてしまうと、「節税ができた」「遺言書を書いた」「保険に入った」という個別対策が目的化してしまいます。

本来は、
親はこれからどう生きたいのか、これからの人生をどのように過ごしたいのか。
子どもたちはどのような関係を望んでいるのか。
家族全体として何が一番幸せなのか。

そこから考え始める必要があります。

まずは“全体を設計する”

相続には、財産、税金、不動産、家族関係、介護・認知症対策など、さまざまな要素が関わります。

だからこそ大切なのは、個別の対策を考える前に、全体をどう設計するかという視点です。

家族の状況を整理し、将来起こり得る問題を洗い出し、どのような状態を目指すのか決める。
つまり、「全体最適」を先に考えるということです。

その上で、必要な手段を選択していく。これが本来の順番です。

よくある失敗例

典型的なのが、節税目的でアパートを建築するケースです。

確かに、借入をして収益アパートを建てれば、相続税評価額を下げられ節税になる場合があります。
しかし、相続が発生した後、子どもたちが遺産分割しようとしても、アパートは簡単には分けられません。

「長男が管理するのか」「売却するのか」「家賃収入をどう分けるのか」で意見が対立し、却って揉めてしまうことがあります。さらに、納税資金が不足するケースも少なくありません。

節税という“部分最適”を優先した結果、家族全体では“全体最適”になっていなかったという典型例です。

遺言書も同じ

遺言書も、「書けば安心」というものではありません。

親御さんが子どもたちの気持ちを聞かず、自分だけの意向で作成した場合、相続発生後に遺言書を見た子どもたちが、「なぜこうなったのか」「自分の気持ちと全く違う」「これでは不公平だ」と感じることがあります。

その結果、遺言書が有るにもかかわらず、感情的な対立が生じることもあります。

大切なのは、家族の思いを共有し、納得感のある形で全体を設計した遺言書の内容です。

相続対策の本質

相続対策とは、何か特別な商品を使うことでも、節税テクニックを駆使することでもありません。

「家族が将来どうなったら幸せか」を考え、その実現に向けて全体を設計すること。

その設計図ができて初めて、遺言書、生前贈与、生命保険、不動産活用、家族信託などの手段が意味を持ちます。

相続対策で本当に大切なのは、「何をするか」ではなく、「どのような未来を目指すか」です。

そして、その未来を家族全体にとって最も良い形に整えていくことこそが、相続コンサルタントの役割であり、相続対策の本質だと私は考えています。


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この記事を書いた人

吉野喜博

吉野喜博

1951年5月、広島県広島市生れ。現住所は埼玉県所沢市。
国立呉工業高等専門学校建築学科を卒業して、建築の企画・設計・監理業務に約30年従事する。
30年前位から不動産の仕事(ビル・マンション企画開発・販売、土地の仕入れ、仲介業務等)も併行して行う。
2008年から相続の勉強に本格的に取り組む。
2016年から所沢市にて、市民の方を対象に相続勉強会と相続相談会を開催している。
2022年4月に所沢相続サポートセンターを設立。
各所で、相続セミナーの講師および相続相談会の相談員を担当。

趣味:
所沢の米で日本酒を作る会の監事、日本酒を嗜むこと、カラオケ、韓国語の勉強、映画鑑賞。

保有資格:
NPO法人 相続アドバイザー協議会認定 上級アドバイザー、
一般社団法人 相続診断協会認定 上級相続診断士、 公認 不動産コンサルティングマスター、
相続対策専門士、 一級建築士、 宅地建物取引士、 ファイナンシャルプランナー