相続の相談を受けていると、「もっと早く相談して頂いていれば」という思いをすることがあります。
特に、内容を十分理解しないまま遺産分割協議書に署名・押印してしまったケースです。
今回は、実際にあった相談事例をご紹介しながら、遺産分割協議書に署名・押印する前に確認していただきたいことをお伝えします。
弟が亡くなったが、自分にも相続権があるのか?
約2年前、東京都内にお住いの70代の男性からご相談をいただきました。
「先月、地方の故郷に住む弟が亡くなった。弟は独身だが、昔の奥さんとの間に子供がいるらしい。」
兄弟は3人兄弟で、長男、相談者である二男、三男(亡くなった方)でした。
亡くなった弟さんには、自宅やアパート、預貯金、保険金などの財産があるとのことでした。
私はまず、「もしお子さんがいるのであれば、そのお子さんが相続人になります。戸籍を取り寄せて確認してください」とお伝えし、結果が分かったら再度ご相談いただくことになりました。
1年後に分かった意外な事実
それから約1年後、再びその方から電話がありました。
「自分には全く財産が来ないようだ。相続手続きは全て終わっているらしい。」と大変ご不満な様子で、何とかならないのかとのご相談でした。
わたしは先ず、お子さんの存在について確認しました。
すると、調査の結果、亡くなった弟さんには子供はいなかったとのこと。
子供がいないのであれば、両親はすでに他界されているので兄弟が相続人となり、遺産分割協議を行う必要があります。
そこで私は、「兄弟で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書に署名・押印しましたか?」とお聞きしました。
ところが返ってきた答えは、「よく分からない。」というものでした。
「兄に言われてサインしただけだった」

後日、その方から再び連絡がありました。
確認したところ、
「遺産分割協議書かどうか分からないが、兄が書類を送ってきて、相続手続きのため書類にサインと印鑑を押して急ぎ返送してくれと言われた。それで、サインと押印をして返送した。」とのことでした。
おそらく、それが遺産分割協議書だったのでしょう。
しかし、相続において遺産分割協議書は非常に重要な書類です。
誰がどの財産を取得するのかを決める正式な合意書であり、一度署名・押印すると、その内容を後から覆すことは容易ではありません。
もちろん、詐欺や脅迫など特別な事情があれば別ですが、「内容をよく読まなかった。」「よく分からないまま印鑑を押した。」という理由だけで無効にすることは非常に困難です。
後悔しない相続のために
相続人同士で十分に話し合い、内容に納得したうえで遺産分割協議書に署名・押印するのであれば問題ありません。
しかし、
「何が書いてあるのかよく分からない。」
「兄弟から早く押して返してほしいと言われた。」
「自分の取り分が適正なのか分からない。」
という状況であれば、一度立ち止まって専門家に相談することをお勧めします。
相続は人生で何度も経験するものではありません。一方で、署名・押印した結果は長く残ります。
だからこそ、焦って手続きを進めるのではなく、内容をしっかり理解し、納得したうえで判断することが大切です。
「もっと早く相談しておけば良かった。」
そんな後悔をしないために、遺産分割協議書に署名・押印する前に、ぜひ一度ご相談ください。
「相続では“知らなかった”が、大きな損失につながることがあります。」
後悔しない相続、そして家族の絆を守る相続のために、私たちはお手伝いしたいと思っています。
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