「付言(ふげん)事項」ってご存じでしょうか?
最近は知ってる人も増えていますが、まだまだご存じでない人も多いようです。
遺言書の内容は、法定遺言事項(遺言書本文)と付言事項に分かれます。
付言事項とは、法的な効力が有り権利関係を中心に書いた法定遺言事項のあとに、法律で定められていない遺言者の想いや遺言者が相続人に伝えたいことを書き記したものを言います。
皆さん、法定遺言事項の方はこういう事を書きたいと色々考えられますが、付言事項の方まではなかなか頭が回らないようです。
私は遺言書作成のサポートをさせて頂く場合、なるべく付言事項を書いてくださいねとご提案しています。
また、どういう風に書いたら良いか分からないという方には、その方から色々お話しをお聞きして、たたき台として案文を作成させて頂くこともあります。
何のために書くの?
付言事項については法的な効力は生じません。
しかし、遺言者の最終意思表示として書かれるので、遺言者の意志が尊重され、結果的に希望等が実現されることが多くなります。
また、付言事項が書かれていることによって、相続後の相続人間の関係の悪化やトラブルを防ぐこともできます。
付言事項に書く事柄としては
1.相続分を指定した理由
遺言は、相続人の貢献度や立場・役割によって公平な相続を実現させるために書きます。
親の面倒を最後まで看ていたり親の介護をした相続人、親の事業を手伝ったり事業を承継する相続人、実家を相続して法事やお墓を承継する相続人などは、他の相続人より大きな貢献をしていたり大きな負担が生じることが有ります。
それらを考慮して公平にするのが遺言です。
法定相続分(=平等相続)は裁判官でも変えられませんが、変えられるのが遺言です。
しかし一方で、遺言は、平等の中に不平等を持ち込みます。
相続人の中には、不平等な相続に対して不満や違和感を持つ人もいます。
遺言が有ったがために、相続人同士揉めてしまうことが有ります。
不満を持った相続人が、遺留分侵害額請求権の行使という法的手段に訴えることも有ります。
そうなると兄弟姉妹が争うことになります。
このような遺言によるトラブルを防止するために、付言事項は大きな効果が有ります。
付言により遺言者の気持ちや想いを相続人に伝えることができるからです。
親が付言を書くことにより、遺言で不平等な相続になったけれども、そうする事で公平な相続になったという事を子供達が納得すれば、遺言によるトラブルも無くなります。
2.家族への感謝の気持ち、子供達に伝えたいこと
配偶者や子供達、今までの人生でお世話になった人達への感謝の気持ちを書くと良いと思います。
まさに、遺された人への最後のラブレターです。
自分も書いていて幸せな気持ちになりますし、それを見た家族も幸せな気持ちになると思います。
また、子供達には、自分が今までの人生で大切にしてきたこと、何を大切に生きてきたか、何を守って生きていって欲しいかなどを、書き残して伝えるのも相続だと思います。
3.自分亡き後の希望する家族のありかた、家族・兄弟姉妹間の融和の依頼
自分が亡き後も、家族・兄弟姉妹が仲良く暮らして欲しい。
子供達に対しては、配偶者のことを扶けて生きていって欲しいなどの希望を書きます。
4.葬儀の方式や埋葬場所に関すること
最近は死生観によって、葬式やお墓をいろいろ選択される方が増えています。
簡素な家族葬を望まれたりお別れの会だけにしたり、お墓も樹木葬や海への散骨を望まれる方も多くなっています。
これらの事を付言事項で書いておくことにより、遺された人は迷うこと無く、できるだけその方式で行なう事ができます。
まとめ
法的効力の有る法定遺言事項を、心の部分で支え、想いを伝える相続にするのが付言事項だと言えます。
相続というと最近は相続財産ばかりに焦点が当たりますが、想いを伝えていくのも相続だと思います。
そういう面から、付言事項は法定遺言事項と同じくらい重要なものではないでしょうか。
自筆証書遺言だけでなく、公正証書遺言にも付言事項は入れることができますので、遺言を書くときは、ぜひ付言事項も書いてくださいね。
参照:上級相続診断士 知識編テキスト