先日開催した相続勉強会で、遺産の分け方によっては揉めることが有るというお話をしたところ、参加者の方から、「遺産の分け方は法律で決まっているのではないですか?」という質問が有りました。

確かに、遺産の分け方が法律で決まっているのであれば、揉めることはないですよね。

参加者の方が言われるように、民法には法定相続分について規程されています。

遺産分割について、民法ではどうなっているのでしょうか?

法定相続分って何?

堅い話になりますが、民法第900条(法定相続分)には法定相続分ついての規定が有り、「同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。」と書いてあります。

子供と配偶者が相続人の時は、子と配偶者の相続分は各2分の1とすること。

配偶者と直系尊属が相続人の時は、配偶者の相続分は3分の2,直系尊属の相続分は3分の1とすること。

配偶者と兄弟姉妹が相続人の時は、配偶者の相続分は4分の3、兄弟姉妹相続分は4分の1とすること。

子、直系尊属または兄弟姉妹が数人ある時は、各自の相続分は、相等しいものとすること。

などが定められています。

民法でこのように定められているのですから、参加者の方が疑問に思われるのは当然かと思います。


では、民法第900条に従って法定相続分で遺産分割しなければいけないのでしょうか?

法定相続分より遺言が優先する

民法第902条には(遺言による相続分の指定)という条文があり、「被相続人は、法定相続分の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定めることができる」と書いてあります。

従って、第900条で法定相続分の規定が有りますが、法定相続分より遺言の方が優先することになります。

民法第906条(遺産分割の基準)の意味

民法第906条に(遺産分割の基準)という規定があり、「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」と書いてあります。

「えっ、第900条に書いてあることと矛盾するんじゃあないの!」と思いますよね。
この第906条の条文を読むと、法定相続分で分けなくて良いように読めます。

但し、この第906条は、個々の相続人の法定相続分に従った分割を前提として、分割に際して具体的にどんな財産をどの相続人に分割するかを定める基準を意味するようです。

共同相続人間の不公平を是正する遺産分割の修正要素として、「特別受益」や「寄与分」といったものが有りますが、これらによって法定相続分を修正して算定された各相続人の取り分を「具体的相続分」と言うようです。

法律って難しいですね!

相続人同士の話し合いによる、法定相続分と違う遺産分割は有効なの?

それでは、相続人同士の話し合いによって決めた遺産分割はどうなのでしょうか?

民法第907条(遺産の分割の協議又は審判等)には、「共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で遺産の全部又は一部の分割をすることができる。」と規定してあります。

従って遺言が無い場合、相続人は相続人間の協議(話し合い)で、法定相続分とは異なる相続分で自由に分割することができることになります。

又、第907条の2項では、「遺産の分割について共同相続人間で協議が調わないとき、又は協議することができないときは、各共同相続人はその全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。」と規定しています。

遺産分割協議は、相続人の中で一人でも反対する者がいる場合は纏まらないので、家庭裁判所に分割を請求することになりますが、調停を先ず行います。
 
調停も話し合いですが、調停でも纏まらない場合、審判となります。
審判は殆どの場合、法定相続分での分割になります。

まとめ

それでは結局、遺産分割の優先順位はどうなるのでしょうか?

1.先ず、遺言が有れば遺言が優先されます。
   遺言による相続分の指定(民法第902条)

2.遺言が無い場合は、相続人間の合意が優先されます。(協議分割)
   遺産分割協議(民法第907条)

3.遺言が無く、相続人の協議も纏まらない(合意ができない)場合は、家庭裁判所に請求して調停となります。  (これも話し合い)
   遺産分割の基準(民法第906条)、審判等(民法第907条)

4.遺言が無く、遺産分割協議も纏まらないで、調停も纏まらないときは、家庭裁判所での審判となり、殆どの場合、法定相続分での分割となります。
   法定相続分(民法第900条)、遺産分割の基準(民法第906条)、審判等(民法第907条)

遺言が有っても、相続人全員が合意すれば、遺言を使わないで協議で自由に分割することもできます。

但し、遺言執行者がいる場合、遺言執行者は遺言の内容を実現する権利と義務が有りますので、遺言を使わない場合は遺言執行者との調整が必要になります。

遺言は相続対策として大変有効な手段ですが、遺言が有っても、遺留分(相続人に対して保証された相続財産の割合)を侵害していたり、相続人全員が納得したものでなければ、相続後、遺言を開封したあと揉めたり、相続人間の関係が悪くなることが有ります。

遺言が無い場合の遺産分割協議も、相続人の間で話が纏まらなければ、調停や審判や裁判となって相続人同士が争うことになります。

今日はちょっと難しい、法律について書いてしまいました。

相続が起きる前の、親が認知症や介護状態になった時はどうするか、親の相続対策はどうするか、親の相続があった時はどうするか・・・。

これらについて是非家族で話し合いをし、それに基づいた相続対策を行っていけば、相続人同士揉めることは殆ど起きないと言えるでしょう。

相続前に家族で話し合いをして、是非円満で円滑で幸せな相続を実現して頂きたいと思います。

この記事を書いた人

吉野喜博

吉野喜博

1951年5月、広島県広島市生れ。現住所は埼玉県所沢市。
国立呉工業高等専門学校建築学科を卒業して、建築の企画・設計・監理業務に約30年従事する。
30年前位から不動産の仕事(ビル・マンション企画開発・販売、土地の仕入れ、仲介業務等)も併行して行う。
2008年から相続の勉強に本格的に取り組む。
2016年から所沢市にて、市民の方を対象に相続勉強会と相続相談会を開催している。
各所で、相続セミナーの講師および相続相談会の相談員を担当。

趣味:
所沢の米で日本酒を作る会の監事、日本酒を嗜むこと、カラオケ、韓国語の勉強。

保有資格:
NPO法人 相続アドバイザー協議会認定 上級アドバイザー、
一般社団法人 相続診断協会認定 上級相続診断士、 公認 不動産コンサルティングマスター、
相続対策専門士、 一級建築士、 宅地建物取引士、 ファイナンシャルプランナー