「みなし相続財産」ってご存知ですか?
本来の相続財産である民法上の相続財産ではないが、相続税法上、相続財産とみなされる財産です。
本来の相続財産ではなくても、相続または遺贈により取得した財産と同じ経済的な効果があるものについては、課税の公平の見地から、みなし相続財産として相続税の課税財産となります。
それには先ず、本来の相続財産である民法上の相続財産には、どんな物が有るのか知っておく必要がありますね。
民法上(本来)の相続財産にはどんな物が有る?
民法上の相続財産は、経済的に価値が有るものは全て該当します。
現金、預貯金は言うまでもなく、土地、建物、有価証券、借地権、借家権、車、貴金属など、金銭に見積もることができる経済的に価値が有るものは全て含まれます。
それと、相続財産にはプラスの財産だけでなく、マイナスの財産もあります。
マイナスの財産としては、借入金、住宅ローン、未払い税金、未払い医療費、預り敷金、保証人・連帯保証人の地位などがあります。
それに加えて、亡くなった人(被相続人)が相続人に生前に贈与した財産(お金、有価証券、不動産など)も特別受益と言って、基本的に民法上の相続財産になります。
相続税法上と民法上の相続財産はどう違うの?
相続税法上の相続財産は、基本的には本来の相続財産である民法上の相続財産と殆ど同じですが、最初述べた「みなし相続財産」が加わります。
みなし相続財産の主なものとしては、生命保険の死亡保険金や、会社から支払われる死亡退職金があります。
みなし相続財産は民法上の相続財産ではないので、基本的に遺産分割の対象外ですので、特に死亡保険金は相続対策としていろいろ活用できます。
死亡保険金は、相続人の内の一人が不動産など価値が大きい物を取得した場合に、他の相続人に代償金として渡すお金として使えます。
また、遺言が遺留分を侵害していた場合に、遺留分侵害額請求をされた時に遺留分侵害額を支払う原資としても使えます。
また、死亡保険金は民法上の相続財産ではないので、基本的に相続放棄をしていても受け取れます。
死亡保険金は相続人固有の財産です。
このように死亡保険金は民法上の相続財産ではないので、相続対策として色々使えますが、相続税を計算する時は相続財産に加えて計算しなければいけません。(「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が有りますので有効に使いましょう。)
それと、みなし相続財産以外に相続税法上加わる相続財産としては、相続開始前3年以内(改正により7年以内になる)に贈与された贈与財産や、相続時精算課税適用者が贈与を受けた財産なども含まれます。
今回はみなし相続財産、特に死亡保険金について説明させて頂きましたが、相続で揉めないための手段として使える場合は検討されてみてはいかがでしょうか。
また、死亡保険金は多くの場合、請求書が保険会社に届いてから1週間位でお金が支払われるので、葬儀費用や当面の生活費が不足している場合も助かりますね。
生命保険の宣伝をする訳では有りませんが、生命保険は相続対策の手段として色々利用価値が有りそうです。
参照:FPジャーナル 2023年8月号