先週、彩講会という埼玉県のシニアの講師の会の定例会で、早稲田大学人間科学学術院の扇原淳教授にご講演頂きました。
テーマは、「人生100年時代の生き方」
人間科学という視点から、人生100年時代の生き方について、いろいろ示唆に富むお話しをして頂きました。
と言っても、そもそも人間科学とは何ぞや??なのですが、先生のご説明によると、
「人間に関わる多様な問題に対して、様々な学問をもって総合的に取り組む学問で、人間に関する多様性と総合性を追求する学問」とのことです。
抽象的で、まだ良く分からないと思いますが、もう少し詳しく言うと、
1.人間の尊厳や幸福を中心に据えた学問(人間生活の質の向上)
2.細分化された諸分野の学問を横断的に学ぶ(学問の総合性)
3.文理融合、人間を取り巻くあらゆるものが題材(学問の多様性)
4.「環境」「健康・福祉」「情報」の切り口から人間を考える
などを研究されているようです。
科学や化学は進歩しましたが、それにより核兵器や生物兵器などが開発されたり、地球は温暖化し、環境は壊され、人間や地球の生物は真に幸せになったとは言えません。
人間科学は、あらゆる学問を総合して、平たく言うと、「どうすれば人間は幸せになれるか」を研究する学問のようです。
人間科学の視点から人生100年時代について色々お話しが有ったのですが、その中で私が特に気になったことが有りました。
100歳まで生きるとすると、どうなる?
今、先進国で生まれる子供の50%は105歳以上まで生きることになるそうです。
20歳は100歳以上
40歳は95歳以上
60歳は90歳以上
100歳まで生きるとすると、勤労時代の所得を10%貯蓄したとして、引退後、最終所得の50%相当のお金で毎年暮らすとすると、引退できるのは80歳代となるそうです。
80歳代と言っても、80歳から89歳まで結構幅がありますが、それはその人の健康状態、経済状態、仕事内容によって変るのでしょう。
生活費の面だけを考えてみても、住居が持家か賃貸かで違ってきますが、夫婦二人の厚生年金と国民年金だけでは、毎月5万から10万円くらい生活費が不足するのではないでしょうか。
少子高齢化の中、これから年金が減額されていく事も考えられます。
毎月5万円不足するとして年間60万円。特別な支出も考えると年金だけでは年間100万円足りません。
100歳まで生きるとしたら、80歳からでも2000万円必要です。
歳を取ると病気になることも多くなるし、介護費用や介護施設に入るとしたらその費用もかかります。
そうなると、80歳からでも3000万円くらい必要?
お金が有る人は別として、やっぱり80歳代にならないと引退できないようです。
しかし、80歳代まで働く体力と気力が有るか? 働くとして80歳代でどんな仕事が有るのか?
そこが問題ですね。
これから相続はどうなる?
2020年時点で、
男性65歳の平均余命は19.97歳なので、平均で約85歳まで生きる。
男性75歳の平均余命は12.54歳なので、平均で約87.5歳まで生きる。
女性65歳の平均余命は24.88歳なので、平均で約90歳まで生きる。
女性75歳の平均余命は16.22歳なので、平均で約91歳まで生きる。
これらの数字はあくまで平均なので、現在でも自分が100歳まで生きる可能性があることを考えておかねばなりません。
経済面のそうですが、健康面や孤立・孤独にならない対策を考える必要があります。
相続のことを考えると、100歳まで生きるとなると、生きている間に結構お金を使うので、遺す財産は少なくなるのではないかと思います。
また、子供も70歳から80歳位になっていて、子供の方が先に亡くなっているケースが増えるのではないでしょうか。
そうなると孫や甥・姪などが相続人になり、関係性が薄い人達で遺産分割協議をするので、揉める確率が高くなりそうです。
また、人生が長くなると、一生涯で2回、3回結婚するのが普通になるかも知れません。
又は、2回目、3回目は事実婚にする人が増えるかも?
逆に、最近は生涯未婚の人が急激に増えているので、兄弟姉妹の相続も増えるのでしょう。
相続人は兄弟や甥、姪ばかりという場面が多くなりそうです。
外国人労働者も増えてくるので、国際結婚や国際相続も増えてくる。
同性婚もいずれ近いうちに認められるでしょう。
いろいろ考えると、これから相続は益々複雑になってくるので、遺言書の作成など生前の相続対策が今まで以上に重要になってくると思われます。
いずれにしても、これからは日本がかつて経験したことのない未知の領域に入って行きます。
まだ分からない事も多いですが、よく考えて問題点を認識して解決していくと同時に、超高齢社会が魅力あるもので希望が見いだせる社会にしたいものです。