相続の勉強会や個別相談で、「遺言書の書き方を知りたいので教えて欲しい。」とよく言われます。
遺言書(遺言)は遺産を承継するための法律的な文書ですので、法的に厳格な要件が有ります。
要件に合致していないと無効になってしまいます。
また、相続対策として大変有効な方法です。
そのため、遺言の書き方を知りたいという要望は分かります。
しかし、書き方だけであれば、今はインターネットで調べればたくさん文例が出て来るのである程度分かります。
でも遺言を書くときに、書き方さえ知っていれば大丈夫でしょうか?
遺言書が有っても揉めることがある。
遺言が無いと遺産分割協議をすることになります。
仲の良好な相続人同士なら遺産分割協議が円満にいく可能性は高いですが、それでも相続人の内の誰かが経済的に苦しかったりすると、法定相続分での遺産取得を主張して揉めることが有ります。
ましてや、あまり良好な関係で無かったり、疎遠な相続人同士の遺産分割協議はお互い神経も使い、一歩間違うと遺産を巡って相続争いに発展します。
ですので、私も相続のご相談を受けるとき、相続対策として遺言を書くことを勧めることが多いのですが、私がご相談を受ける中で、遺言が有るから揉めているケースも少なくありません。
2年前位のご相談ですが、80歳代の母親を妹さん夫婦が10数年一緒に暮らして面倒をみていたのですが、亡くなる1年前位に長男が妹さん宅から母親を連れ出して同居を始めました。
そして、母親にその同居中、殆どの財産を長男に相続させる旨の遺言を書かせました。
この遺言を書いた時の母親の意志能力を巡って裁判で争いになり、結局は母親が既に認知症だったということで妹さん夫婦が勝ちました。
しかし、その後も決着していない問題がいくつか有り相談に来られました。
この様に遺言が有っても揉めているケースは、上記の件以外にもこれまで何件か有ります。
なぜ、遺言書が有るのに揉めるのか?
揉める例で一番多いのが、子供の内の誰かが、他の子供達に内緒で親に遺言を書かせている場合です。
大抵書かせている子供に有利な内容になっているので、他の子供達は不満ですし納得がいきません。
親が書いたときに意思能力が有ったか、認知症ではなかったかで揉めることになります。
また違う例では、親が子供達の気持ちや考えを聞かないで遺言を書いた場合です。
子供が望まない「郊外や田舎の実家、田畑・山林、古いアパートなどを相続させる。」などと遺言に書かれ揉めるケース。
また、遺言は平等(均分相続)を不平等にすることになるので、少ない財産しか相続できない相続人は不満を持ち、相続後の相続人の間の関係が悪くなったり、遺留分の訴えを起こしたりします。
出来るだけそうならないように、遺言を書く時はそれらに対する対応が必要です。
親だけの判断で遺言を書いたケースでは、遺言の内容で遺産分割すると相続税が高くなってしまい、せっかく親が書いた遺言を使わないで、遺産分割協議で遺産を分けるケースも有ります。
このように、親がせっかく子供のための相続対策と思って遺言を書いても、それが却って揉める原因となったり、遺産分割をややこしくしてしまう事が有ります。
せっかく書いた遺言で揉めないためには
せっかく書いた遺言で揉めないためには、遺言を書く前に、まず家族の状況を正しく把握し、課題や問題点があればそれを明確化し、その課題・問題を当事者で有る家族全員で共有することです。
そして、家族それぞれの気持ちや考えを、お互いに伝えたり聴いたりして共有することがとても重要です。
その家族での話し合いの中で、出来れば遺留分などの法律面や、不動産が有れば不動産の承継の仕方、及び相続税の特例がうまく使えているかなどの相続税の面を専門家にチェックしてもらうと良いでしょう。
そして、当事者全員が同意した内容の遺言を作成すれば、相続後も揉めたり争いになることがなく、遺言者にとっても相続人にとっても幸せな相続になります。
但し、家族の話し合いは、家族だけでやってもうまく行かないことが多いのも事実です。
私たち相続コンサルタントは、家族の話し合いを支援する家族会議支援という事もやっていて、家族の皆さんが気持ち・考えを共有したり、同意・合意したりするお手伝いをしています。
せっかく書いた遺言で家族が後々揉めないよう、遺言を作成する時には正しい進め方で行い、円満で幸せな相続を実現して頂きたいと思います。
どのように遺言を作成したらいいかよく分からない方は、いつでもご相談ください。
TEL : 090-5580-1050 Mail : yoshino-y0529@nifty.com