遺言書は「書き方」さえ知っていれば大丈夫?

相続の勉強会や個別相談で、「遺言書の書き方を教えてほしい」というご相談をよく受けます。
遺言書は、遺産を承継するための法律文書ですから、法的に厳格な要件があり、形式を間違えると無効になります。
その意味で「正しい書き方」を知ることはとても重要です。
ただし、注意すべき点は色々ありますが、今はインターネットで調べれば文例や書き方は簡単に手に入ります。
では、書き方さえ知っていれば、遺言書は安心なのでしょうか。
私の考えとしては、「いいえ」です。
遺言書は書いた方が良いが・・・
遺言書が無いと遺産分割協議をすることになります。
相続人同士の仲が良好であれば、遺産分割協議は円満にいく可能性が高いでしょう。
しかし、相続人の内の誰かが経済的に苦しかったりすると、法定相続分での遺産取得を主張して揉めることがあります。
また、相続人同士があまり良好な関係でなかったり、疎遠な相続人同士の遺産分割協議はお互い神経を使い、一歩間違うと遺産を巡って相続争いに発展する可能性があります。
ですから、私も相続のご相談を受ける時は、相続対策として遺言書を書くことをお勧めしています。
遺言書があるのに揉めた事例
しかし、相談を受けてきた中には、遺言書があるからこそ揉めてしまったケースも少なくありません。
4年ほど前のご相談です。
80歳代のお母様を、妹さん夫婦が10数年にわたり同居して面倒をみていました。
ところが亡くなる1年ほど前、長男が妹さん宅からお母様を連れ出し、同居を始めました。
その同居期間中に、「ほとんどの財産を長男に相続させる。」という内容の遺言書が作成されていました。
結果として、この遺言書は、「作成時に意思能力があったのか」、「すでに認知症ではなかったのか」が争点となり、裁判に発展しました。
最終的には、遺言書作成時には認知症が進行していたとして、妹さん夫婦側が勝訴しました。
しかし、裁判が終わっても家族関係は修復されず、いくつかの問題が未解決のままとなり、どうしたら良いかと相談に来られました。
なぜ「良かれと思った遺言書」で揉めるのか
遺言書で揉めるケースで一番多いのが、誰か一人が、他の相続人に内緒で遺言書を書かせている場合です。
多くの場合、その内容は書かせた子に有利なものになっています。当然、他の子供たちは納得できません。
また別の例では、親が子供の気持ちを聞かずに、子供が望まない「郊外や田舎の実家」「田畑や山林」「古いアパート」などを、一方的に相続させる内容の遺言を書き、揉めることもあります。
遺言書は、平等な相続(均分相続)を敢えて不平等にする力を持っています。
そのため、少ない財産しか相続できない相続人は不満を抱き、遺留分の請求に発展することもあります。
せっかく親が子どものためを思って書いた遺言書が、争いの火種になってしまうのは、とても残念なことです。
家族関係を壊さない遺言書にするために
せっかく書いた遺言書で揉めないために大切なのは、遺言を書く前の進め方です。
まず、家族の状況や課題を正しく把握し、問題点があれば明確にすること。
そして、その内容を家族全員で共有し、それぞれの気持ちや考えを伝え、聴くことが欠かせません。
その上で、遺留分などの法律面、不動産の承継方法、相続税の特例が適切に使えているかなどを、専門家にチェックしてもらうことが望ましいでしょう。
当事者全員が納得・合意した内容で作成された遺言書は、相続後も揉めにくく、遺言者にとっても相続人にとっても幸せな相続につながります。
家族だけでの話し合いが難しい場合は、第三者として家族会議を支援する専門家の力を借りることも一つの方法です。
遺言書は、財産を分けるための書面であると同時に、家族への最後のメッセージでもあります。
家族の関係を壊さない相続のために、ぜひ「進め方」と「内容」を大切にしていただきたいと思います。
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