最近、「負動産」という言葉をよく聞きます。
数年前までは、負動産って何?という方も少なからずいらっっしゃいましたが、このところ大分認知されてきたようです。

負動産とは不動産の中のある状態のものを言いますが、そもそもどんな状態の不動産なのでしょうか?

負動産とは?

不動産は通常は価値のある財産ですが、負動産は一般的に、所有していることがマイナスに働く不動産のことです。

一般的によく言われる負動産の例として、
田舎の空家・田・畑・山林、古アパート、古貸家、貸し地、郊外の空家、原野商法で買った山林・原野、古いリゾートマンション、使わない別荘などが有ります。

負動産と言われるものを整理してみると、

1)売れない、貸せない不動産。

自分では使わないので、売却または賃貸したいが需要が無く出来ない。
持っていても固定資産税や管理・維持費がかかるので、負担が大きい。

2)売却価格(時価)より相続税評価額の方が高い不動産。

貸し地(底地)、借地権、崖地、不整形地、無道路地 など
売却しても相続税が払えず相続税の負担が重くなる。
遺産分割で揉める原因となる。

3)他人に危害を加え、損害賠償で訴えられる可能性が有る不動産。

古くなった建物は、崩壊したり台風で建材が飛んで、隣地や周辺に危害を加える恐れが有ります。
耐震性の無い古いアパートを賃貸していて、地震や台風で建物が壊れ賃借人が死傷した場合、損害賠償を請求される可能性が有ります。

また、古い擁壁がある土地や崖地を所有している場合も、それらが崩れて隣地の人や物に危害を及ぼした時は所有者責任を問われ、損害賠償の対象になります。

4)経営の悪化が予想される収益不動産
   
古い貸し店舗・貸し事務所、古い賃貸アパート・賃貸マンションなどです。
空室が増加し、修繕費の増大していく収益不動産です。

最近は、郊外の駅前でもシャッター通りになったりしていて、空室の店舗・事務所が目立ちます。

5)隣地と境界に関して紛争がある土地

境界について紛争があると境界確定ができず、売却することができません。

6)建築基準法上の道路に接していない土地

建築基準法上の道路に接していないと建物を建てることができず、価値が非常に下がります。

7)収益性の低い土地

A物件
駅から徒歩1時間、バス便、住居系地域、容積率100%、路線価5万円/㎡、土地面積2,000㎡、相続税評価額1億円の土地。

B物件
駅から徒歩5分、商業地域、容積率500%、路線価50万円/㎡、土地面積200㎡、相続税評価額1億円の土地。

A物件、B物件とも相続税評価額は同じ1億円です。
でも、どちらが稼ぐ土地でしょうか? どちらが高く売却できるでしょうか?  相続対策の効果が高いのはどちらでしょうか?

子供たちは、どちらの土地を相続したいと思いますか?
A物件を負動産とまで言うかどうかは別として、B物件と比べてA物件を相続したいとは思わないのではないでしょうか。

負動産を相続させないためには?

では、負動産を所有している場合、どうすればいいでしょうか?

1.できるだけ早く手放す。

手放す方法としては、

金額が低くても売却できるなら、できるだけ早く売却する。
業者にお金を払って引き取ってもらう。
近隣の人に引き取ってもらう。
自治体に寄付。(ほとんど受け付けていない。)
空家バンク
ネットのサイトに掲載 など

相続発生後は、

遺産分割で相続しない。
相続放棄する。
国庫帰属制度を使う。
業者に引き取ってもらう。

などが有ります。

2.改善して、貸せる状態にする、優良物件にする。

リフォームやリノベーションをして、優良な収益物件にすることです。
しかし費用がかかるので、費用が捻出できず難しいのが問題。
費用をかけても収支が合うかどうかの検討が必要。

3.土地の有効活用を考える。

その場所に最も適した用途に変更して、土地を有効活用することです。
古アパートを建替えて高齢者用住宅や賃貸戸建にしたり、古事務所ビルを建替えてマンションにすることなどです。

また、隣接地と併合して有効活用や売却をしたり、底地と借地を同時に売却したり、隣接地と土地を交換したり、底地権と借地権を交換して完全所有権にすることなども考えられます。
  
4.優良不動産に買い換える。

時価より相続税評価額の方が高い不動産や、収益性の低い不動産を売却して、収益性の高い駅近の物件や都心の物件など優良不動産に買い換える方法です。

まとめ

人口の急激な減少により、今後負動産はもっと増えてくると思われます。

負動産を所有していると時間の経過と共に、手放すことも出来ず、改善も出来ず、買い換えることも出来ず、どんどん不利な状況になっていくことが考えられます。

負動産を子供たちに相続させることは子供たちにとって大きな負担となり、子供たちに借金を相続させるのと同じことになってしまいます。
負動産が相続で揉める原因となります。

負動産によって、子供たちが揉めたり負担になることなく幸せな相続を実現するために、親の世代で負動産の整理や処分を行なっておき、子供たちに負動産を相続させないようにしましょう!

負動産を所有していたり相続して困ったり悩まれている方は、一度ご相談ください。

相談先  TEL : 090-5580-1050   Mail : yoshino-y0529@nifty.com

この記事を書いた人

吉野喜博

吉野喜博

1951年5月、広島県広島市生れ。現住所は埼玉県所沢市。
国立呉工業高等専門学校建築学科を卒業して、建築の企画・設計・監理業務に約30年従事する。
30年前位から不動産の仕事(ビル・マンション企画開発・販売、土地の仕入れ、仲介業務等)も併行して行う。
2008年から相続の勉強に本格的に取り組む。
2016年から所沢市にて、市民の方を対象に相続勉強会と相続相談会を開催している。
2022年4月に所沢相続サポートセンターを設立。
各所で、相続セミナーの講師および相続相談会の相談員を担当。

趣味:
所沢の米で日本酒を作る会の監事、日本酒を嗜むこと、カラオケ、韓国語の勉強。

保有資格:
NPO法人 相続アドバイザー協議会認定 上級アドバイザー、
一般社団法人 相続診断協会認定 上級相続診断士、 公認 不動産コンサルティングマスター、
相続対策専門士、 一級建築士、 宅地建物取引士、 ファイナンシャルプランナー