映画『ソーゾク』が描く“普通の家族”が崩れゆく様子

映画『ソーゾク』は、高齢の母親の死をきっかけに、仲の良かった家族の関係が少しずつ軋み始め、やがて深刻な「争族」へと発展していく様子を、ユーモラスさを交えながら描いた作品です。
鑑賞しながら私は、「これはどこの家庭でも起こり得る現実だ」と感じました。

物語の中心となる鈴木家は、ごく普通の家族です。
母親の死を悲しみながらも、しっかりと弔おうとする姿には温かさすらあります。
ところが遺産の話が出た途端、雰囲気は一変します。

実家を売却して分けようと主張する長女と次女。
跡継ぎだから土地家屋は自分たちのものだと主張する弟夫婦。
後から見つかった遺言書の解釈をめぐって亡き長男の未亡人まで加わり、さらに主張が対立してついには裁判沙汰に発展してしまう――そんな姿は決して他人事ではありません。

実家不動産は争族の“火種”になりやすい

この映画で特に印象的だったのは、争いの中心が「実家の不動産」である点です。
現実の相続相談でも、まったく同じ構図がよく有ります。

不動産は価値が大きい一方、預貯金のように分けることができません。
だからこそ複数の相続人がいると「取り分」の問題がこじれ、感情の対立へと発展しやすくなります。

私が日々の相談で強く感じているのは、“相続は、財産の多少に関わらず争いが起きるということです。
むしろ平均的な家庭こそ、事前の対策が十分でないために、相続後に深刻なトラブルに発展しやすい傾向すらあります。
映画の鈴木家の姿は、決して特別ではなく、どの家庭にも潜む“争族の構図”と言えます。

争族は相続後に防ぐのが難しい――鍵は「生前の話し合い」

作品の中では、後から遺言書が見つかりますが、その内容をめぐって家族間の溝がさらに深まってしまいます。
ここがまさに現実と同じで、相続が始まってから家族が冷静に話し合うことは難しいのが現実です。

ではどうすればよいのか。
答えはシンプルで、
“親が元気なうちに、親の想いを家族へ伝え家族で話し合っておくこと”
この一点に尽きます。

財産の状況、実家の扱い、親の介護や将来の希望などを、家族で共有しておくこと。
そしてその内容を遺言書や家族信託、財産管理等委任契約、任意後見契約、生前贈与などの形として整えておくこと。
これが争族を防ぐ最も確実な方法です。

映画を観ながら、私自身も「やはり生前の対策こそが家族を守る鍵だ」と改めて実感しました。

“うちは大丈夫”こそ危険――映画が教えてくれる相続のリアル

映画『ソーゾク』は、相続はどの家庭にも必ず訪れるテーマであり、
準備をしないと“普通の家族”でも争族になる
という現実を、ユーモラスでありながら鋭く描き出しています。

とくに実家不動産が大きく、預貯金が少ない家庭では、争いが起こりやすいことは現実でも同じです。
そして、相続後に争いを止めるのは極めて難しいため、家族の絆を守るための対策は、生前にしかできないのです。

「うちは仲がいいから大丈夫」
「まだ先の話だから準備はいらない」
そう思っているご家庭にこそ、ぜひ観てほしい一作でした。


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この記事を書いた人

吉野喜博

吉野喜博

1951年5月、広島県広島市生れ。現住所は埼玉県所沢市。
国立呉工業高等専門学校建築学科を卒業して、建築の企画・設計・監理業務に約30年従事する。
30年前位から不動産の仕事(ビル・マンション企画開発・販売、土地の仕入れ、仲介業務等)も併行して行う。
2008年から相続の勉強に本格的に取り組む。
2016年から所沢市にて、市民の方を対象に相続勉強会と相続相談会を開催している。
2022年4月に所沢相続サポートセンターを設立。
各所で、相続セミナーの講師および相続相談会の相談員を担当。

趣味:
所沢の米で日本酒を作る会の監事、日本酒を嗜むこと、カラオケ、韓国語の勉強。

保有資格:
NPO法人 相続アドバイザー協議会認定 上級アドバイザー、
一般社団法人 相続診断協会認定 上級相続診断士、 公認 不動産コンサルティングマスター、
相続対策専門士、 一級建築士、 宅地建物取引士、 ファイナンシャルプランナー