今週の夕方、東京高等裁判所まで闘った友人N君とお疲れさん会を二人でやりました。
N君は平成30年に訴えられてから約6年間裁判で闘い、先日高等裁判所(高裁)で和解が成立しました。
簡単に経緯を説明
事の発端は、平成30年にN君が自宅の外壁塗装工事とベランダのウレタン防水工事を業者に発注したことです。
工事は終わりましたが、施主及び施工業者の立会いによる竣工検査もなく、塗料の出荷証明書もなく、工事記録写真や竣工資料もありません。
見積書で塗料は特許製品を指定していましたが、指定されていないものが使用されていたり、塗装も3回塗らなければいけないところ2回しか塗っていない可能性が強まりました。
下請け業者任せの杜撰な工事だったため、工事完成時の残代金の支払いを留保していましたが、施工業者から残代金を支払うよう裁判所に訴えられました。
ビックリしたN君は弁護士に相談し、当初は弁護士を代理人としてやっていました。
しかし、建築工事にあまり詳しくない弁護士は、裁判所が指示する工事の説明写真が作れなかったり技術的な説明も十分できませんでした。
それで、一級建築士でもあるN君は弁護士をつけないで、自分で訴訟のやり方を勉強し裁判を行なうことにしました。
令和3年、N君は弁護士なしで地方裁判所(地裁)に反訴の訴えを起こし、逆に施工業者を契約不履行や損害賠償請求で訴えました。
地裁の判決では残代金は支払わなくてよいことになりました。しかし、損害賠償金は請求した金額よりかなりかけ離れていました。
N君は高裁に控訴することにしました。
令和5年、N君は高裁に控訴状、控訴理由書、準備書面などを提出しました。
私も第三者として、建築と不動産の専門家としての陳述書を書いて欲しいと頼まれたので、慣れないことではありましたがN君を応援できればと思い引受けました。
私は、このように杜撰な工事は契約違反にあたること。
また、このように杜撰な工事をされた建築物は不動産の価値が減少し、売却時には売却価格が低くなることなどを陳述しました。
高裁ではN君、業者のやりとりが何回かありました。
私もN君と打ち合せをし再度陳述書を提出しました。
そして、このたび高裁から和解案が提示されました。
残代金は支払わなくてよいこと。
損害賠償額は請求した額にはまだまだ及びませんでしたが、地裁の判決よりは良くなりました。
まだ納得できる内容や金額ではなかったので、和解案を蹴って最高裁に上告する方法も有りました。
しかし、上告しても新しい証拠がないと却下(門前払い)される可能性が高いこと。
さすがに最高裁において弁護士なしでの訴訟は、最高裁に相手にされないと思われたので和解しました。
泣き寝入りはしない
当初業者側は、一般市民に対して裁判所に訴えれば、素人はビックリして残代金を支払うだろうと考えていたと思います。
しかし、杜撰な工事に納得できないN君は裁判で闘うことを決意しました。
裁判をすれば、多くのエネルギーと時間と心労とお金を使います。
勝訴して損害賠償金を勝ち取っても、弁護士費用を払えば殆ど手元には残りません。
それでもN君は闘うことにしました。
理由の一つ目は、杜撰な工事によって建物の価値を下げられたこと。
理由の二つ目は、契約違反によるこのようないい加減な工事が許せなかったこと。
理由の三つ目は、このような杜撰な工事を許せば、自分だけでなく、今後他の人もこのような被害に遭う可能性があること。
これらの理由により、N君は高裁まで闘いました。
業者側も、ここまで一般市民が争ってくることは予想していなかったようで、和解案にも譲歩して和解が成立しました。
少しは懲りたと思います。
まとめ
費やしたエネルギーや時間、心労を考えれば、裁判で勝ち取った賠償額は少ないものでしたが、それでも裁判をやって良かったねと、二人でお酒を飲みながら労をねぎらいました。
終わってから考えると、もっとこの事に焦点を当てて訴えれば良かったとか、こういう観点から訴えたらもっと良かったなど色々反省点もありました。
しかし、弁護士に頼まないで素人が初めて裁判をしたのだから、それもしょうがないねと笑いながら話しました。
彼はすごく勉強になったでしょうし、私も勉強させてもらいました。
この裁判が社会に及ぼす影響は微々たるものかも知れませんが、それでも世の中に蔓延する杜撰な工事に一石を投じられたのではないかと思います。
そういう意味で、私はこの裁判をやったN君を尊敬し、その行為を褒めたいです。
今回は相続の話ではありませんでしたが、みんなが幸せになり、よりよい世の中を後世に残していくという意味では繋がっているのではないかと思います。
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