
今年も8月6日の広島平和記念日、8月9日の長﨑平和記念日は、テレビ中継で平和記念式典を観ました。
8時15分と11時2分には目を閉じ、犠牲になった多くの方々の冥福を祈りました。
人々の上に原爆が投下され、「過ちは繰り返しません」と誓ってから80年になりますが、世界を見ると、ロシアやイスラエル、アメリカ、インド、パキスタン、北朝鮮など、核兵器が使用されるリスクは大きくなっています。
核戦争や気候変動などの脅威によって人類が滅亡するまでの残り時間を象徴的に示す2025年の終末時計は、昨年からさらに1秒進んで残り89秒と発表されました。
日本も台湾有事に巻き込まれれば、米中の戦争に巻き込まれる可能性が大いにあります。
核ミサイルが飛んでくるだけでなく、核で攻撃されなくても原子力発電所を攻撃されれば、核爆発と放射能汚染により過酷事故が発生し甚大な被害に見舞われます。
今年の式典では鈴木長﨑市長の平和宣言も良かったですが、特に私の心に響いたのは湯崎広島県知事のスピーチでした。
湯崎広島県知事のスピーチ
広島平和記念式典後半、湯崎英彦広島県知事が登壇しました。
彼はスピーチの中で、多くの指導者や人々が信じている核抑止について、「抑止は人間の頭の中で構成された概念、つまりはフィクションであり、普遍の真理ではない」と語りました。
そして、「人間は必ずしも核抑止論が前提とする合理的判断が常に働くとは限らず、抑止は自信過剰な指導者や突出したエゴ、高揚した民衆の圧力、誤解、錯誤により、歴史上何度も破られてきた」と指摘したのです。
【全文】広島県の湯崎知事 平和記念式典でのあいさつ「核兵器廃絶という光に向けて這い進む」 | NHK | 原爆
核抑止の論理とその脆さ
抑止とは、攻撃に対して反撃する意志と能力を示し、相手に攻撃を思いとどませる作用です。
核抑止は、この理屈を核兵器に適用したもので、その意志と能力を相手が正しく認識し、「攻撃すれば自分も滅びる」と理解してこそ成り立ちます。
しかし、この理屈は非常に危ういバランスの上に成り立っています。
歴史は、力の均衡が繰り返し崩れてきたことを示しています。核抑止も例外ではありません。
核戦争寸前まで行った誤警報
過去に核戦争寸前まで行った誤警報の事例もいくつかあります。
- 1960年:月の出をミサイル発射と誤認し、「全面核攻撃の危機」として報告。
- 1962年:キューバ危機の最中、ソ連潜水艦の艦長が核魚雷発射を決断しかけた。
- 1979年:米NORADのコンピュータに、訓練用テープが誤って入力され、ソ連による核攻撃と誤認。
- 1983年:ソ連の早期警戒システムが、アメリカからの核ミサイル攻撃を誤報。
- 1995年:ノルウェーの観測ロケットを、ロシアが核ミサイルと誤認し、核戦争準備態勢に。
これらはいずれも、偶然や個人の冷静な判断によって最悪の事態を免れた例です。
テレビで言っていましたが、アメリカの元国防長官ウィリアム・ペリー氏は著書『核のボタン』で、冷戦期にアメリカで少なくとも3回、ソ連で2回の重大な誤報があったと記しているそうです。
ペリー氏は、たった一度の誤報が核戦争を引き起こす可能性があると強調し、核抑止の見直しを訴えているようです。
たった一度の核戦争が、人類も地球も再生不能な惨禍に落とし入れる--その現実を、私たちは直視しなければなりません。
私たちは、この80年間「偶然の幸運」によって核の惨禍を免れてきましたが、それが今後とも続く保証は全くありません。
核抑止がもたらすジレンマ
「核抑止」というのは、核使用の可能性をゼロにはできません。
むしろ核抑止に依存すればするほど、核兵器の軍拡競争が加速し、安全保障のジレンマに陥ります。
相手の攻撃を防ぐために戦争も辞さない姿勢をとること、相手を脅しあい威嚇しあうことで成り立つ核抑止は、本質的に平和とは真逆の方向へ向かってしまいます。
日本が果たすべき役割
唯一の戦争被爆国であるという事実は、世界のなかで日本に特別な立場を与えてきました。
憲法第9条を持ち、沖縄戦という民間人を巻き込む悲惨な歴史を経験し、東アジアとの協調の中で経済発展を遂げてきました。
こうした歴史的背景を持つ日本だからこそ、「法の支配・自由・人権・民主主義」といった価値観に加え、「非戦・非核」という価値観を世界に発信し続けることが、国際社会への重要な貢献になると思います。
(※1の提言より引用)
全人類、地球のために、核なき世界を
湯崎知事のスピーチは、「核抑止」という危ういバランスの上に成り立つ平和の危険性を改めて私たちに突きつけました。
核兵器が存在する限り、その使用の可能性は否定できず、誤報や偶発的な事態が人類を破滅に導く危険も消えません。
広島からのメッセージは、核なき未来を目指す道しるべとして、私たち一人ひとりの胸に刻まれるべきだと思います。
偶発的な誤報や暴走によって、人類が自らの未来を破壊してしまう前に、ほんの小さなことでもいいので自分ができる核なき世界への道を模索すること。
二つの平和記念式典を観た後、その思いを新たにしました。
(引用※1)新外交イニシアティブ 政策提言「抑止一辺倒を越えて」
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