尊厳死とは、何を意味するのか?

以前に遺言公正証書の作成をサポートさせていただいた高齢の姉妹の方から、新たに「尊厳死宣言公正証書」の作成のサポートを依頼されました。
尊厳死宣言とは、自分が将来、病気になり、それが不治であり、かつ死が間近に迫っている場合に、延命治療を望まないことを、あらかじめ家族や医療関係者に対して表明し、尊厳を持って自然な死を迎えるための意思を示すものです。
これは「命をあきらめる宣言」ではなく、「自分の最期を、自分らしく選ぶための宣言」だと、私は考えています。
尊厳死を考えるきっかけ——義父・義母の最期から学んだこと
私自身も、かつて身近な人の最期に直面した経験があります。それは、私の妻の父親と母親のことでした。
妻の父親は末期の肝臓癌で治る見込みもなく、介護している家族に対して苦痛のあまり「早く殺してくれ!」と懇願しました。
今思うと、できるだけ苦痛を取り除いてあげて、自然なかたちで死を迎えさせてあげられることができたら、どれだけ義父は幸せな最後だったかと思います。今でも後悔の念に駆られます。
また、妻の母親は意識を失い、数年間、点滴による栄養だけで命をつないでいました。体は全く動かず、床ずれや排泄のケアなど、家族の介護負担も大きなものでした。
治る見込みのない中で、ただ「生かされている」状態が続く日々。その姿を見ながら、「果たしてこれは本人にとって幸せなのだろうか」と何度も考えさせられました。
二人の最後をみて、人はただ生きるのではなく、「どう生きて、どう死ぬか」が大切なのだと痛感しました。
そして、延命措置を拒否することが、時に本人にも、家族にも、社会にもやさしい選択となる場合があることを知りました。
自分の意思を残すという準備
尊厳死宣言公正証書は、法的に強制力を持つものではありません。
しかし、家族や医師に対し、自分の明確な意思を伝える強力な手段になります。
今回の依頼者の方も、「自分の思いははっきりしているけれど、家族や廻りの人に迷惑をかけたくない。だから、きちんと文書にしておきたい」とおっしゃっていました。
人生の最期を自分らしく、穏やかに迎えるために、遺言書と同じくらい大切な“終活”のひとつとして、尊厳死宣言公正証書の作成を、これからも必要な方にご案内していきたいと思っています。
まとめ
医療の進歩により、延命が可能な時代だからこそ、「延命を望まない」という選択も尊重されるべきです。
最期のときに、「自分の意思が尊重される安心感」、そして「家族が後悔しない選択」のために。
尊厳死宣言公正証書という備えが、静かであたたかな最期への一歩になるかもしれません。
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