先日、久しぶりに気心の知れた呑み仲間と一杯やっていた時に、仲間の一人が薬を出して飲みました。

高齢者が多かったので、それからしばらく健康や病気の話になり、「やっぱり死ぬときはピンピンコロリがいいよね。」という話になり、ほぼ全員ピンピンコロリに賛同しました。

しかし、後から考えてみると、場合によってはピンピンコロリになってはまずいよね、と思いました。

ピンピンコロリで逝きたい理由は?

ピンピンコロリとは、健康寿命の長さを言い表した表現で、「病気に苦しむことなく、元気で長生きし、最後は寝込まずにコロリと死ぬこと、または、そのように死のう」という標語のようです。(略してPPK)(ウィキペディアによる。)

健康寿命とは、簡単に言うと、「老化や病気などで不自由な状態にならずに生活できる期間」のことです。

日本人は平均寿命が伸びて、健康寿命と平均寿命の差が問題となっています。

2019年の男性の健康寿命は72.68歳、平均寿命は81.41歳で、その差は8.73歳。

2019年の女性の健康寿命は75.38歳、平均寿命は87.45歳で、その差は12.07歳。

つまり死ぬまで平均として、男性で約9年、女性で約12年は、老化や病気、介護状態などで不自由な生き方をしなければいけないという事です。

死ぬまでそんなに長い年数、不自由な状態で過ごしたいとは誰も思いません。

その様な状態になれば、本人が大変だったり辛いだけでなく、家族など回りの者にも迷惑をかけてしまいます。 金銭的負担も大きくなります。
自宅で介護や寝たきりになると、介護する人の肉体的、精神的負担がすごく大きくなり、介護する人自体が疲れ果てて体を壊したり普通の生活が送れなくなってしまいます。

また、日本の総人口に占める高齢者(65歳以上)の割合が2022年には29%になっています。
2050年には40%近くにもなるとも言われています。

少子高齢化の中、高齢者の人数と割合がどんどん大きくなっていきます。
その上に、高齢者で体の不自由な人が増えれば、介護費や医療費などが増大し、日本の財政をより圧迫していきます。

3日前の新聞に、厚生労働省の推計では高齢化で2040年度に介護職員が2019年度と比べ約69万人不足する、という記事も出ていました。

そのような本人の思いや家族の負担、国の財政事情などが有って、健康寿命と平均寿命の差を出来るだけ小さくしたいと言う事で、ピンピンコロリが理想とされているのでしょう。

ピンピンコロリがまずい場合とは?

ピンピンコロリにも2種類あると思います。

一つは、死への備えをしっかりやった上で、亡くなる前まで元気で、或いは病気や介護状態であったとしてもその期間がごく短く、天寿を全うして老木が倒れるように亡くなるケース。

もう一つは、50歳代~70歳代でまだ元気で働いたり社会的な活動をしている場合で、心筋梗塞や脳血管疾患で突然亡くなるケースです。

前者のケースが、誰もが望むピンピンコロリのケースでしょう。
でも、このようなケースはまだ少ないと言われています。

しかし、後者のケースはどうでしょう。

突然亡くなる場合は、本人は死への準備や覚悟が出来ていません。
まだやりたい事や、今亡くなる事への悔いが有るに違いありません。

突然亡くなると、家族も大変な状況になります。
家族も何の準備も心構えも出来ていないでしょう。

気持ちの整理もつかない状態で、葬儀のことや、訃報は誰に連絡したらいいのか?、相続手続きは何をすればいいのか?、お墓はどうすればよいか?、遺産は何がどこに有るのか?、遺産はどのように分けたらいいか?など、分からないづくめで、大変な精神的負担と多大な労力を要します。

死は誰にも絶対に来る。だから、その時のために準備しておこう!

死は、いつ来るか分かりません。しかし、誰にも必ず来ます。
あなたが今日、または明日、突然亡くならない保証はどこにも有りません。

私の場合、エンディングノートを書いたり、遺言書や尊厳死宣言公正証書を作成して死への準備をしているつもりですが、まだ気になっている事が有ります。

それは、凄く小さな小さな会社ですが、会社を持っている事です。
会社の事は、私しか分からないので、私が突然亡くなったら、かみさんや子供達はお手上げ状態になります。
会社を清算したり整理するために、どれだけ多大な労力と精神的な負担を要するか分かりません。
そのため、キチンと内容が分かるようにしておくか、法人ではなく個人事業に変えておくなどの対策が必要だと思っています。

あなたが今日突然亡くなった場合、家族に痛みを生じさせる事は有りませんか?
ご家族が大変な思いをされる事は有りませんか?

それに、ご本人が突然死した後、遺族が相続で揉めるケースも有ります。

急に先立たれた遺族の負担を軽くするために、葬儀の方法や訃報の連絡先、お墓のこと、財産の状況と保管場所、デジタル遺産、その他気になる事などをエンディングノートに書いておきましょう。
また、エンディングノートには、介護が必要になった時のことや、延命治療についても書いておくと良いですね。

家族の状況や財産状況、自分の想いなどは時間の経過と共に少しずつ変るので、エンディングノートは毎年書き直すといいと思います。
私の場合、今度の正月にエンディングノートは書き直すつもりです。

遺産分けで揉めないように、遺言書も作成しておくことをお勧めします。
遺言書も一度書いて終わりではなく、何か状況に変化が有った時は書き直ししましょう。

エンディングノートや遺言書の付言には、家族への想いも書いて伝えましょう。
書き方が分からない人は、私が主宰している相続勉強会や相談会に来て頂ければお教えします。

ピンピンコロリで気持ちよく逝くためには、いつ死んでもいいように準備が大切です。

準備をした上で、やりたいことをやり、想いを伝えておきたいことは伝え、少しでも後悔のないように毎日を生きていくことが、幸せな死に方に近づく方法だと思います。

「立つ鳥跡を濁さず」
幸せな最後を迎え、遺された家族に多大な痛み・負担をかけないよう、今度の正月休みから、出来ることからやってみませんか。

この記事を書いた人

吉野喜博

吉野喜博

1951年5月、広島県広島市生れ。現住所は埼玉県所沢市。
国立呉工業高等専門学校建築学科を卒業して、建築の企画・設計・監理業務に約30年従事する。
30年前位から不動産の仕事(ビル・マンション企画開発・販売、土地の仕入れ、仲介業務等)も併行して行う。
2008年から相続の勉強に本格的に取り組む。
2016年から所沢市にて、市民の方を対象に相続勉強会と相続相談会を開催している。
2022年4月に所沢相続サポートセンターを設立。
各所で、相続セミナーの講師および相続相談会の相談員を担当。

趣味:
所沢の米で日本酒を作る会の監事、日本酒を嗜むこと、カラオケ、韓国語の勉強。

保有資格:
NPO法人 相続アドバイザー協議会認定 上級アドバイザー、
一般社団法人 相続診断協会認定 上級相続診断士、 公認 不動産コンサルティングマスター、
相続対策専門士、 一級建築士、 宅地建物取引士、 ファイナンシャルプランナー