信友直子さんの著書、「ぼけますから、よろしくお願いします。」と「ぼけますから、よろしくお願いします。おかえりお母さん」を読みました。
80歳代の直子さんのお母さんが認知症になり、90歳代のお父さんがお母さんを介護する老々介護、東京で仕事をする直子さんが時々広島へ帰って両親の世話をする遠距離介護などが書かれています。
直子さんが生れ育った所であり、お父さん、お母さんが住んでいるのが広島県呉市という所で、この本の舞台となる所です。
私も広島で生まれて広島で育ち、呉に有る工業高等専門学校に5年間通ったので、呉はとても親しい場所です。
本の中の会話も全て広島弁なので、信友家のことがすごく身近に感じられました。
直子さんは東京でテレビのドキュメンタリーディレクターという仕事をやっており、広島に帰省した時にお父さんお母さんが元気な頃からの映像をビデオカメラで撮っていました。
私は観ていないのですが、この本は映画になり、お母さんが認知症になる前の元気な頃の姿も見ることができるようです。
本の中では、お母さんが元気な頃の冗談好きで社交的で前向きな姿、次第に認知症の症状が出て来るお母さんの不安や苦悩、認知症になって来るお母さんを支えるお父さんの態度と覚悟、直子さんの葛藤や気付きなどが書かれています。
認知症や介護といったどちらかと言うと暗い気持ちになる話題なのに、読んだ後ほのぼのとした気持ちになるのは、お母さんが元気な頃家族に対して注いでいた愛情、お父さんや直子さんがお母さんを愛する気持ちがすごく感じられるからでしょう。
特にお父さんのお母さんに対する深い愛情、介護する覚悟や認知症になった妻をありのままに受け入れ平然と支える姿には、敵わないなーと思いました。
介護はプロとシェアしなさい
この本は、認知症について不安を抱いている私達にとって、色々な気付きが貰える本だと思います。
介護の現場では介護される人が虐待されたり、老々介護の疲れで心中したり配偶者を殺したりと暗い話を聞きます。
家族が自分たちだけで介護しようとすると肉体的・精神的に疲れ果て、介護される親や配偶者に対してイライラしたり恨んだりして、優しい感情を持てなくなってきます。
短期間ならまだしも、介護は何年続くか分かりません。
信友家も暫くの間はお父さんがメインでお母さんの介護をし、直子さんが時々帰省して介護していましたが、それも限界が有ったようです。
この本では、「介護はプロとシェアしなさい。」と言っています。
直子さんが、認知症専門病院の院長先生からもらったアドバイスです。
このアドバイスは、介護・認知症の問題について対応する上ですごく重要な考えだと思います。
身体介助・入浴介助などは専門的な研修を受けたヘルパーなどのプロにお願いし、家族は介護される人・認知症の人の心に寄り添い、愛する事といった家族にしか出来ないことに専念する。
そうすることで介護される人も幸せになり、介護する人も肉体的・精神的に余裕が出来て相手を愛することができて幸せになる。
信友家もそうすることで、お母さんの最後を幸せな形で見送れたようです。
2025年には高齢者の5人に1人が認知症になる時代と言われています。
また現在、80歳代前半の4人に1人、85歳以上の半分以上が認知症という厚労省の発表が有ります。
近い将来、自分若しくは配偶者、或いは親が認知症になるかも知れません。
認知症の問題は他人ごとではありません。
認知症に備えてどんなことが今できるのか?
色々話を聞いたり自分で調べて勉強して、認知症に備えておきたいものです。